2013年12月24日火曜日

会社の業務・財産状況を調査するための検査役選任申立

日比谷ステーション法律事務所の弁護士田原です。

 会社の取締役が不正な行為や法令違反行為を行っていることが疑われる場合、株主としては、計算書類・会計帳簿や取締役会議事録を閲覧することによって情報を収集し、取締役に不正・不法な行為があれば、株主総会や取締役解任の訴えによって当該取締役を排除する方法が考えられます。

  計算書類・会計帳簿の閲覧等の請求についてはこちらの記事をご覧下さい。
  →http://hsloffice.blogspot.jp/2013/12/blog-post_12.html

  取締役会議事録の閲覧請求についてはこちらの記事をご覧下さい。
  →http://hsloffice.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html

      取締役解任の訴えについてこちらの記事をご覧下さい。
  →http://hsloffice.blogspot.jp/2013/06/blog-post.html


 しかし、計算書類や会計帳簿の閲覧の対象は一定の資料に限定されており、また取締役会議事録についても不正・不法な行為の形跡が残っていることは少ないため、これらの閲覧によって詳細な事実関係や証拠を収集することは難しい場合が多いといえます。

 そのような場合に、株主から裁判所に対して「検査役」の選任を請求し、会社の業務や財産状況を調査してもらうという方法があります。このための手続を「検査役選任申立」といいます。

検査役選任申立の要件
 会社の業務や財産状況の調査のための検査役選任申立の要件に関しては、会社法第358条第1項が次のように定めています。

<会社法第358条第1項>
 株式会社の業務の執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを疑うに足りる事由があるときは、次に掲げる株主は、当該株式会社の業務及び財産の状況を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立をすることができる。
一 総株主(株主総会において決議をすることができる事項の全部につき議決権を行使することができない株主を除く。)の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を有する株主
二 発行済株式(自己株式を除く。)の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の数の株式を有する株主


検査役選任申立の手続
 検査役選任申立は、申立書を会社の本店所在地の地方裁判所に提出する方法で行います。

 検査役選任申立書には1000円分の収入印紙を貼付します。
 また、事務連絡用に裁判所が定める郵便切手と検査役報酬及び費用に相当する金額の予納金を予納します。
 
 検査役の費用及び検査役の報酬は会社の負担となることが会社法上決められていますが、申立にあたって株主が一旦予納する必要があります。
 予納金は、会社の規模や調査対象によって変わりますが、過去の例に照らすと数十万円から数百万円の範囲が多いようです。

 なお検査役の資格について法律は何も定めていませんが、実際には弁護士が選任されるのが通常です。


検査役による調査対象
 検査役選任申立を受けた裁判所が申立要件が充足されていると判断した場合、裁判所は検査役を選任しますが、その際、検査役による調査事項を検査目的の範囲に限定します。
 もっとも、検査役は調査事項を調査するために必要であれば、計算書類や会計帳簿に限定されない広範な調査権を有しており、必要があるときは子会社の業務・財産状況も調査することができます(会社法第358条第4項)。
 

検査役による調査の報告
 検査役は調査の結果を書面で裁判所に報告し、検査役選任申立を行った株主と会社にも書面の写しを提供する義務を負っています(会社法第358条第7項)。
 

日比谷ステーション法律事務所では、株式会社の業務・財産状況を調査するための検査役選任申立に関する法律相談を常時受け付けています。
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