2013年11月25日月曜日

取締役の辞任~取締役はどのような手続で辞任することができるのか~

日比谷ステーション法律事務所の弁護士田原です。

株式会社の取締役は多くの場合2年の任期で就任していることが多いかと思いますが、任期途中で取締役を辞任する場合もあります。
今日は取締役の辞任についての法律問題を解説したいと思います。


取締役は自分の意思で辞任することができるか?

まず、取締役は自分の意思で辞任することができるのか?これは言い換えれば他の取締役や株主の意思に反してでも辞任することができるのかという問題です。

取締役と会社との法律関係は委任契約の一種であると理解されており、民法上の委任の規定が適用されます。
そして、民法の委任に関する規定は、「委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。」(民法第651条第1項)と定めておりますので、取締役は、いつでも自分の意思で一方的に取締役を辞任することができるということになります。

ただし、取締役の辞任によって欠員が出てしまう場合には、取締役の一方的な都合での辞任を認めるわけにはいきませんので、会社法は「役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。」(会社法第346条第1項)と定め、新任の取締役が就任するまでの間は取締役の義務を免れることはできないこととされています。


取締役を辞任するにはどうすればよいか?

(1)自分の他に代表取締役がいる場合
自分以外の者が代表取締役として存在する場合には、代表取締役に対して辞任届(辞表)を提出することで辞任することが可能です。辞任届(辞表)は一方的な意思表示で足りますので、辞任届(辞表)が代表取締役に到達すれば効力を生じます。
代表取締役に手渡しで辞任届を提出すれば辞任の効果は生じるのですが、後になって「受理していない。」と言われる可能性があるのであれば、内容証明郵便等の形式で提出することが有効です。

(2)自分が唯一の代表取締役であり、会社に取締役会がある場合
自分が唯一の代表取締役である場合には、代表取締役に対して辞任届(辞表)を提出する方法では辞任することができませんので、原則として、取締役会を招集して辞任の意思表示を行う必要があります。
もっとも、別の方法によって他の取締役全員に辞意が伝わりさえすれば、それで辞任の効力が認められると考えられています。

(3)自分が会社の唯一の取締役である場合
自分しか会社の取締役がいない場合に辞任するケースは極めて少ないといえますが、仮に辞任する場合には、会社の幹部従業員に対して辞任の意思表示受領権限を付与した上で、この幹部従業員に意思表示することで辞任することができる可能性があります。


・取締役を辞任する場合の注意点

以上のように、取締役は自分の意思で一方的に取締役を辞任することができますが、会社に不利な時期に一方的に辞任した場合には、辞任にやむを得ない理由がない限り、会社に対する損害賠償責任を負う可能性がありますので(民法第651条第2項)、その点についての注意が必要といえます。


日比谷ステーション法律事務所では、取締役の辞任に関する法律相談を常時受け付けています。
ご相談は「03-5293-1775」までお気軽にどうぞ。


日比谷ステーション法律事務所の公式ホームページ
http://www.lawcenter.jp/